SDGsは、企業の社会における存在意義を問うもの vol.3

近年、SDGsの認知が広がり、SDGsを経営に取り入れる企業が増えています。しかし、企業においても、私たち一般市民においても、まだ、SDGsの本質を理解していないのではないかという指摘があります。SDGsの本質とはどういうことなのでしょう。

◇SDGsの169のターゲットは新ビジネスの貴重なヒント集

あらためて、SDGs達成のために必要なトランスフォーメーションとはなにかを考えると、企業にとっては、ビジネスモデルの再構築と言えると思います。
 
例えば、日本のある大手化学メーカーは、アフリカなどでのマラリア対策として、殺虫剤を練り込んだ蚊帳を開発し、寄付していたのですが、性能が良く非常に役立つため、大量の注文が入るようになり、原価程度の安い価格で販売するようになりました。
 
この取り組みは、SDGsの目標である貧困の撲滅に繋がるものなのです。
 
貧困というと収入が少ないという経済的な欠乏だけを考えがちですが、それだけでなく、水や食料の問題、トイレなど生活環境の問題、医療や学校教育の問題など、様々な側面があり要因が複雑に絡み合っています。日本企業は、環境問題ならわかるけど、貧困問題には取り組みようがない、と考えてしまいがちですが、いくらでも取り組みの切り口はあるはずです。
 
マラリアの予防も重要な貧困対策のひとつなのです。そのため、この日本の化学メーカーの取り組みは国連からも表彰されました。
 
現在、この化学メーカーは、SDGsに貢献する製品群を認定する社内委員会を立ち上げ、SDGs関連事業規模を見える化してその拡大を図っています。
 
すなわち、SDGsに対する取り組みをマネジメントする新たな仕組みを社内に構築し、新しい事業、成長分野の形成を図っているのです。
 
この化学メーカーは日本を代表するような大企業のひとつですが、中小企業も、中小企業ならではの特徴を活かすことによって、SDGsに関わる新たなビジネスモデルを創出していくことができます。
 
要は、上司からSDGsをやれと言われたからやる、イメージ戦略としてやる、のではなく、それは新たなビジネスを興すチャンスと認識することです。
 
SDGsを策定するにあたって、世界中から意見を求めたところ、500万ものコメントが寄せられたということです。
 
このコメントを反映してつくられた169のターゲットは、いわば、世界中の「いま」と「未来」に対するニーズを凝縮して、具体的な目標にしたものなのです。つまり、新ビジネス、新事業の貴重なヒント集でもあるわけです。
 
これを活用することができた企業が、自社にトランスフォーメーションを起こし、それが、世界のトランスフォーメーションに繋がっていくと考えます。
 
私は、経団連経済広報センターの協力を得て企業人を本学に派遣してもらい、「SDGsと企業戦略」をテーマに企業事例を学ぶという講座を行いました。すると、学生の関心は高く、大教室への変更をしなければならないほどの履修率の高さでした。
 
若い世代にとってもSDGsは他人ごとではなく、自分たちの「いま」と「未来」に関わるものだという認識が高まっているのです。それに応えることは、教職者として非常にやりがいのあることです。

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