オランダの大学が「女性しか雇用しない」宣言─急進的な方法はうまくいくのか?

研究職における男女の不均衡を是正しようと、オランダのある大学がラジカルな方法を採用し、話題になっている。「職員の3分の1が反対した」というこの方法は、実施からたった1年にもかかわらず、すでに大きな成果をあげている。

「女性教授が30%を占めるまで」実施

科学、技術、工学、そして数学の、いわゆる「STEM」と呼ばれる分野において、女性が少ないことはよく知られている。欧州委員会の概算では、EU諸国において大学卒業者の48%が女性であるにもかかわらず、上級研究職に女性が占める割合は24%だ。STEMの分野では15%と、さらに減少する。

こうした男女数の不均衡は、オランダの大学で特に大きかった。同国のアイントホーフェン工科大学(TUE)は、2019年の統計において、教授陣のうち女性が占める割合がわずか15%と、国内では最下位だった。

そこで同大学は、軌道修正のために、大胆かつ新しい雇用プログラムを採用した。

すべての学部で女性の教授の割合が30%になるまで、あらゆるレベルの全研究職について、女性しか雇用しないと宣言したのだ。募集されるポストは、募集開始から最初の6ヵ月の間、男性が応募することはできない。その後、応募資格に足る女性候補がいないという証拠を示すことができれば、学部はようやく雇用枠を男性にも開放できるという。

加えて、TUEは新しく、女性を対象にした「イレーヌ・キュリー研究奨励制度」を立ち上げた。これはSTEMの分野でより高位の研究職に就くことを後押しするためのもので、採用されれば10万ユーロ(約1200万円)の研究資金、さらには社会的支援も受けることができる。

大事なのはリーダーたちの「やり遂げる」という意志

こうした雇用プログラムの施行については、大学内で激しい議論が巻き起こった。TUEの理事長ロバート=ジャン・スミッツによれば、職員のおよそ3分の1が反対を表明したという。

「ですが、この急進的な手法がなければ、男女比率が50%に達するには2042年までかかることになります。そんなに長くは待てません」と彼は話す。

「慣習を打ち破るような方法をうまく機能させるには、トップの指導者層に、やり遂げるという強い意志が必要だ」とスミッツは考えている。

そして今のところ、彼は正しい。2019年、TUEにおける女性職員の割合は15%から25%へと急上昇した。同大学は、5年以内に30%に到達することを目指している。

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