「誰一人取り残さない」 人吉「ひまわり亭」が在宅避難サポート 熊本豪雨

熊本県人吉市矢黒町の農村レストランひまわり亭が、熊本豪雨の被災者支援に奔走している。「食の交流拠点」の特色を生かし、在宅避難者らの食をサポート。ボランティアや物資配布のセンター的役割も担う。一連の活動を支えるのは、地域づくりの輪を広げてきた仲間や、熊本地震の被災地から通い続ける人々だ。

 「みなさん、炊き出しですよ」。8日昼、市中心部の相良町や上薩摩瀬町にひまわり亭のキッチンカーが入り、代表の本田節[せつ]さん(65)がマイクで呼び掛けた。新型コロナ感染防止のため大勢を1カ所に集めず、住民が姿を見せるたびに停車。あらかじめ個別容器に用意したハヤシライスや冷製スープを計100食配った。

 一帯は球磨川の氾濫で浸水。未復旧の自宅で過ごす在宅避難者は多い。家族4人の食事を受け取った日隠[ひがくれ]由貴さん(46)は、自宅2階で生活。1階の台所は浸水し、自炊はカセットコンロでしのぐ。「炊き出しは本当に助かる。栄養バランスも良いので安心です」

 ひまわり亭は女性ボランティア「ひまわりグループ」が1992年に開所。地産地消にこだわり、都市住民に農山村の魅力を発信。グリーンツーリズムを楽しむ観光客らが年間約3万人訪れていた。

 しかし7月の豪雨で球磨川沿いのひまわり亭も2メートル浸水し、厨房[ちゅうぼう]設備などが被災した。それでもグリーンツーリズムの仲間が復旧を急ぎ、4日後にはキッチンカーで炊き出しを開始。さらに2日後には中古設備を持ち込んだ厨房での作業を本格化した。連続34日間で約6千食を無償提供。県内外の仲間が寄せる物資や資金が支えだ。

 11~16日は配食を休止。再開する17日からは軽ワゴン車3台を導入、市内をより細かく巡回して在宅避難者の支援ニーズを掘り起こす。球磨村にも範囲を広げる考えだ。今後は生活再建が困難な1人暮らしの高齢者らの支援に力を注ぐという。

 国連提唱の持続可能な開発目標(SDGs[エスディージーズ])を重視する本田さん。「理念の『誰一人取り残さない』が支援の基本。老若男女が安心し、活躍できる地域を目指したい」と継続的な活動を誓う。

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