新型コロナウイルスの新規感染者数や緊急事態宣言の発令・解除など、日々コロナ関連のニュースに目が行きがちだが、コロナ禍中も地球温暖化・海洋汚染・森林破壊などの環境問題は進行している。国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成期限まで残り10年。私たちはこれまでに何を成し遂げ、これからの課題は何か―。SDGsとその先の世界についてZ世代(1990年代後半から 2010年ごろまでの生まれの世代)100人と話し合うオンラインセミナー「SDGs&Beyond」が1月下旬に開催された。
主催は、海洋ゴミ問題を扱うNPO法人「UMINARI」のEducation事業部。UMINARIを運営するスタッフ側もZ世代が構成する。オンラインセミナーでは最初にSDGsのこれまでの歩みについてレクチャーがあった後、ゲストスピーカーとして国連広報センターの根本かおる所長が登場。国内のSDGs認知度は年々上がってきていると一定の評価はしつつも、気候変動に対する危機意識の低さやジェンダー格差など、日本が抱える課題を指摘。よりグリーン(環境に負荷を与えない)で格差のない世界にするためには、「ダイナミックな社会変革、システム変革が必要だ」と強調した。
今回Zoomを使って開催されたこのセミナーの最大の特徴は、Z世代100人とその上の世代との対話の時間が設けられたこと。5人前後のグループに分かれて、「SDGsで変わったもの/変わらないもの」「Z世代は何ができるか/Z世代と何ができるか」というテーマに沿ってフランクなディスカッションが行われた。根本所長も、「何人かのZ世代が参加する会議・セミナーはこれまでもあったが、参加者のメインがZ世代という企画は初めて」と言及した。
Z世代以外では、官公庁・メーカー・大手企業・マスコミ関係者らが参加。双方ともに、デジタルネイティブであるZ世代がSNSを利用してヨコの繋がりを広げながら、異なる世代やセクターと共創していくことを期待する声が多かった。そして今後の展開として、「Z世代が社会人からアドバイスをもらう会」「企業の製品・サービスについてZ世代から意見を聞く会」などのアイデアが出た。またUMINARIでは、サステイナビリティに焦点を当てた就活イベントを企画しているという。
テーマ「SDGsで変わったもの/変わらないもの」についてセミナーで挙がった意見をいくつか紹介する
(変わったもの)
・若い世代は学校でSDGsの授業があり、認知度は高い
・マイバッグ&マイボトルの習慣化
・メディアで取り上げられる回数が増えた
・企業のSGDsへの取り組みが、企業の良し悪しを量る手段になった
・SDGsが世界の共通言語になった
・制服など、男女の選択肢が広がった
(変わらないもの)
・自分ごととして捉えている人は少ない
・世代を超えたコミュニケーションの難しさ
・危機感の世代間ギャップ
・女性議員の少なさ
・SDGsウォッシュ(SDGsに取り組んでいるように見えて実態が伴っていないこと)
SDGsの達成期限まで残り10年であることについて根本所長は「このままでは達成できない」と現状分析をしつつ、「でも(達成させることは)可能だ」と話した。SDGsはいずれも、誰か一人や企業1社が頑張って達成できる目標ではない。改めて私たち一人ひとりができることは何か考えてみてはどうだろうか。