パンがビールに変身 英国の革新的な食品ロス削減

英国は、国連が掲げるグローバルな17の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、食品廃棄量削減に取り組んでいる。食品ビジネスの中には、革新性とオリジナリティで成功しているレストランやスタートアップも目立つ。今回は、廃棄物ゼロで有名なレストラン「Silo」と、廃棄されるパンから作ったビール「トーストエール(Toast Ale)」を紹介する。

2019年、英国の食品廃棄量は約950万トンを記録した(「Warp」調査)。レストランを含む食品業界による廃棄量は約50万トン。金額にすると、注文1品当たり約130円の損失を被っていることになる。

悲観的側面も指摘されるが、実はレストラン業界のリサイクル率は、他業界よりも進んでおり、全店舗による食品廃棄量の51%以上が再利用されている。

「How To Run A Pub」の調査によると、注文後、約27%以上の客が食べきれずに残すそうだ。残飯のトップは、副菜のジャガイモやサラダである。米国では、客がタッパーなどを使い、食べ残しを自宅に持ち帰る風習があるが、持ち帰りは英国では珍しい。

専門家達は、現状の取り組みは効率性が悪いと指摘し、食べ残しの持ち帰りの推進や副菜の選択肢の増加、軽食メニューの増加、注文時にサイズを特定することなどをアドバイスしている。

英国初の廃棄物ゼロで知られるレストラン「Silo」は、革新的な発想で注目されている。革新的といっても、彼らの方法は極めて原始的である。

農家から材料を直接仕入れる。野菜や果物で飲料を製造する。バターや植物性ミルクを手作りする。自社の製粉機で小麦をついてパンを作る。動物は可能な限り全ての部位を使い切る。リサイクル可能な容器を使用し、材料の調達は電気自動車で行う。

徹底しているのは、食べ物だけではない。物品の再利用にも熱が入っている。例えば、プラスチック製の袋から作られた食器、食品のパッケージで作られたテーブル、醸造後に発生する菌糸類で作ったランプの笠、空っぽのワイン瓶で作った陶磁器などが店内に並ぶ。さらに、コップの代わりにジャム瓶を使う。リサイクル品であふれる店内は、なかなか粋である。

廃棄物が出てしまう場合には、自社の好気性消化処理装置で堆肥を作り、近郊の人々やビジネスにサービスするそうだ。

廃棄量の多い食品といえばパンである。2015年、英国ではパンの44%が廃棄されていた。これに目を付けたのが、ロンドンのブルワリー・TOASTの設立者であるトリスタン・スチュアート氏である。彼はベルギーで出会ったパン使用のビールに発想を得て、スタートアップとしてビール製造を開始した。

パンはベーカリーやスーパーから収集する。その後、粉々に砕き、水と大麦を混ぜてつぶす。ホップと共に煮込み、イーストで発酵する。こうしてビール「Toast Ale」が完成する。

2019年、TOASTは食パン85万1388枚を再利用してビールを醸造した。このパンを積み上げると、エベレスト山脈の約1.2倍の高さになるそうだ。また、材料の一部である大麦をパンに置き換えたことで、熱や水、土地の使用率を大幅に削減し、環境保護に貢献している。

現在、彼の発想は、アイスランドやアメリカ、南アフリカへと渡り、同様のビール造りが行われている。今年は新たな味に挑戦したいと語っている。

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